ハワイ・カカアコ暴行事件に学ぶクレカ保険だけじゃ駄目な理由

ハワイのカカアコ地区の公園内で日本の旅行者が暴行されるという悲惨な事件がありました。
これは、アートで有名なカカアコ地区の公園で発生したもので、お父さんが公衆トイレに行った際に、現地の人たちに暴行を受け、様子を見に行ったお母さんも殴る蹴るの暴行を受けたというものです。

不幸中の幸いは、ご一緒だったお子さん二人は無事だったことと、近くの人が911(エマージェンシーコール)をしてくれたということ。
しかし、海外、特にアメリカでの治療費はとても高額です。今回もお二人で応急処置だけで734万円以上の治療費がかかっているとのこと。
残念ながら海外旅行保険には加入されていなかったため全て自腹。そのため高額な現地での治療は応急処置にとどめ、暴行の翌日に日本に帰国し、すぐに本格的な手術を行ったとのことです。
しかし応急処置だけでも734万円も請求されています。これに加え日本での治療費がかかってくるということです。

このため、治療費を賄うべく、現地在住の方を中心に募金活動が行われております、(私も気持ちばかり募金しました。)

もし海外旅行保険に加入していれば、傷害治療の保険でキャッシュレス診療が受けられ、ハワイで充分な処置を受けることができたはず。さらに日本への移送も救援者費用保険が利用できるため、十分な医療的なケアを受けながらの移送が可能だったはず。
どうしてクレジットカードの保険だけでは不足だったのでしょうか?
海外旅行保険の大切さが改めてわかるこの事件をきっかけに考えてみたいと思います。

クレジットカードの保険に加入しているのになぜ?

今回の事件、「海外旅行保険には加入しておらず」と報道されています。そのため危機管理的な観点から非難する声もありますが、被害を受けられている方は、クレジットカードの保険には加入していたとのこと。
最近は、保険が充実しているクレジットカードも多くあり、金額だけを見て「クレジットカードの保険で十分だよ」と思っている人も多いのではないでしょうか?決して他人事ではありません。

しかし、クレジットカードの保険には注意すべき落とし穴があります。それは
・そもそも補償額が低い。
・特に疾病、傷害治療費の額によってキャッシュレスサービスが受けられない。
・救援者費用の使途が限定されており、移送費には使えないケースもある。
・会員の家族の補償額が低く設定されている
・飛行機の遅延等への対応がない。

などなど。
こうした理由から、ゴールドカードを持っている人でも、海外旅行時には必ず海外旅行保険に別途加入する人が多いです。
クレカ所持者があえて個別の海外旅行保険に入る必然性についてご説明したいと思います。

海外旅行保険加入が絶対に必要な理由

国内旅行でも海外旅行でも、病気やけがになるリスクはそれほど大差あるわけではありません。しかし、国内旅行で保険に入る人はいませんよね?
なぜ海外旅行だけは、海外旅行保険が必須とされているのでしょうか?
それは国内旅行では、日本の優れた医療体制と、充実した保険制度で治療を受けられるからです。

日本では「肺炎で入院」とか「盲腸の手術」でも、家計的には痛いものの、よほどでない限りは「お金がなくて治療できなかった」とか、「病院から多額の請求が来て困っている」などという事態にはなりませんよね。

これは、そもそも「日本の病院の治療費が安いこと」そして「健康保険制度で医療費の自己負担額が抑えられていること」という理由からです。

しかし、海外では、この前提が大きく異なります。
まず、海外、特にアメリカでは「病院の治療費がとても高い」そして「日本の健康保険が適用そのまま適用されない」という現実があるのです。

日本の健康保険の適用は?

「健康保険って海外でも使えるって聞いたけど?」
半分正解。海外旅行中に支払った医療費も、「海外療養費」として支給されるのです。

ただし支給されるのは、日本で同程度の治療を受けた時の金額の70%です。(3割自己負担の考えによる)
例えば盲腸。日本で盲腸の治療をすると治療費は60万円ほどが目安です。日本での治療だと3割の18万円が自己負担、残りの42万円は健康保険組合の負担です。
しかし、海外ではそもそもの医療費が桁違いです。同じ盲腸でもホノルルで治療する場合は300万円の治療費がかかることも。
海外旅行保険に入っていない場合は、自腹で300万円の治療費をホノルルの病院に支払う必要があります。
そして、帰国後に加入している保険組合に海外療養費を請求します。請求により給付される金額は、アメリカでの治療費300万円の7割ではありません。日本国内での治療費をもとに計算されます。そのため、日本で治療した時と同じ42万円しか健康保険組合からの療養費として支払われません。のこり258万円は自己負担になってしまうのです。
なお、韓国のように医療費が日本より安い場合は、現地で負担した医療費の7割となります。

同じ盲腸だとしても自己負担額は大きく異なります。

治療場所 総治療費 支給療養費 自己負担額
日本 60 42 18
ホノルル 300 42 258
シンガポール 167 42 125
フランス 109 42 67
韓国 51 35 16

出典:JI保険

日本だと、18万円の自己負担で住みますが、ハワイなどでは258万円も自己負担額が必要です。その他のほとんどの国でも医療費は日本よりはるかに高額です。
盲腸だけでなく、ケガやその他の病気でももちろん一緒、日本よりも圧倒的に高額な治療費です。

ビジネスライクな海外の医療事情

海外旅行保険が必要なのは、家計への負担だけが問題ではありません。例えばホノルルだと盲腸の場合、治療には300万円かかるとされており、300万円の支払い能力を病院に示せなければ、治療を受けることできないケースもあるようです。
日本だと明らかなホームレスが酔っ払って倒れていても、救急車が来て病院である程度の治療が受けられるのとは大きく違います。

300万円の支払い能力の証明は、クレジットカードや銀行口座のコピー、保証金の入金などのようです。
海外旅行保険に加入していないと、この支払い能力の証明を自分で行う必要があります。病気で痛みがひどい時に英語でこの交渉できますか?まず無理ですよね。
そんなときのために、傷害・疾病治療では「キャッシュレスサービス」という病院と保険会社が直接やり取りをしてくれるサービスがあるのです。これを利用するにはもちろん海外旅行保険に加入しておく必要があります。

海外旅行保険の基本・内容

さて、それでは海外旅行保険の具体的な補償内容を見てみましょう。
損保ジャパンの海外旅行保険のOFFを事例に5泊7日のハワイ旅行で大人一人分を個別にかけた場合の大まかな掛け金もご紹介します。

傷害死亡・後遺症

旅行中の事故や後遺症により死亡した場合に支払われる保険です。実は海外旅行保険においては、必要度は高くありません。基本的に死亡等は、生命保険等をかけているはずです。そのため海外旅行保険での優先度はあまり高くありません。死亡後の家族保障等が心配なら生命保険を見直すべきで、よほどリスクが高い国に行くとか、残された家族が心配な場合以外は気にする必要はありません。複数の保険は合算されませんので、1億の保険1つと、5000万の保険に2つ入ったからと言って2億円の保険金は出ません。最高額の1億円が出るだけです。

ちなみに基本的に海外旅行保険に限っては500万円の補償額があれば十分です。
海外旅行保険での、傷害死亡・後遺症保険金500万円の掛け金70円程度(5泊7日のハワイで大人1人あたり)です。金額に比例して保険料も高くなり、5000万にすると保険料は650円程度です。

傷害・疾病治療費用

病気やけがの場合に支払われる費用です。ケガをした場合の傷害治療費と、病気の場合の疾病(しっぺい)治療費があります。この治療費が海外旅行保険で最も大切です。
交通事故や事件に巻き込まれた際の生死にかかわります。

なお、海外旅行保険では、治療費用が保険で賄われる契約ならば、病院でキャッシュレスで治療が受けられるサービスが主流です。
この「キャッシュレスサービス」は、保険会社が提携している病院を利用することで、保険契約があれば、診療を受けたとの支払い等をすべて保険会社と病院が直接やってくれるというもの。支払い能力があるという証明も必要ありませんし、一度立替払いをする必要もありません。
さらに、請求金額で揉めたり、支払った費用が何か保険会社ともめたりすることもありません。

500万円の保険金だと保険料が1450円(同 5泊7日のハワイ1人当たり)です。
ただ保険金額を2000万円に上げても、保険料は1530円と80円しか上がりません。500万円でもある程度安心ですが、心配ならば1000万とか2000万にすると安心ですよね。

海外旅行中の事例では、1000万以上の治療費になるケースもあるようです。

ただし、1000万円あれば99%の事例では対応できそうなので、その辺は行き先やリスク、滞在日数や過ごし方による判断になろうかと思います。
私自身は、海外旅行保険では1000万円、さらに足りない分は所有しているゴールドカードを利用することで、1500万円程度までは対応可能なのでこれくらいで充分だと見込んでいます。

私は以前、旅行中に転倒した傷が、帰国後に化膿したため、病院に行きました。5000円程度の治療でしたが、保険が出てとても助かりました。

疾病死亡

ケガならともかく、海外で病気によって死亡する確率はかなり低いはず。しかも傷害と異なり後遺障害は対象外です。しかし脳卒中や心不全など可能性は0ではありません。個人的には生涯治療と同額の500万円でもあれば十分な気がします。

賠償責任

ホテルのものを壊したり、他人にけがをさせたりした時の賠償です。
ホテルのルームキーをなくしたり壊したりした場合、階下の客室に水漏れさせてしまった場合、レンタルスーツケースを破損してしまった場合などの賠償費用を賄ってもらえます。
ただし、示談交渉サービスはついていないケースが多いことと、レンタカーによる賠償責任は対象外です。
3000万円の保険金額に対して掛け金は20円程度です。子供とかがいる人は必ず入っておいたほうがいい保険ですね。

携行品損害

カメラやスーツケースなどを、盗難や破損した場合に利用します。20万円の保険金に対して保険料が800円程度と比較的高額。
やはりデジカメやビデオ、スーツケースなど持って行ったものは壊れたりすることが多いので、利用頻度も高いのでしょう。
保険金に比例して保険料も上がります。なお、この保険に関しては保険金が「時価」か「再調達価格」どちらか注意する必要があります。
5年前に買った10万円の時計は、時価の場合は経年変化後の価格(例えば5万円とか)しか支払われませんが、再調達価格は同じものを購入する価格(10万円)です。
再調達価格のほうがメリットは大きいですが、保険料も高いです。利用する保険会社がどちらの保険かは確認しておきましょう。
さらに、携行品1つ当たりの保険金額に上限が設けられているケースがあります。せっかく100万円の保険に入ったとしても、50万円のカメラが壊れた時、1つあたり10万円までの保険契約だと、10万円までしか保証されません。ご注意ください。

救援者費用

・ハイキング中に遭難した場合の捜索費用
・旅行中の事故等に対して家族がかけつける経費
・旅行中に入院して、日本の病院へ移転するための費用
などが該当します。
ちょっと特殊な費用ですよね。
ただし、捜索隊や日本への転院費用など大事な経費なので忘れずにつけたいものです。
事故で家族が駆けつける場合は、当日料金となり渡航費用も高くつきます。また、日本への転院は病状によっては非常に大きな費用が掛かります。保険料も2000万円に対して90円程度と、それほど高くないので、しっかりと保証しておきましょう。
ただし、救援者の範囲は保険商品により様々なようです。OFF保険では、日本への移送費用も対象となりますが、クレジットカードの保険では対象にならないケースもあるようです。

こちらの事例でも、移送費用はかなり負担が大きいようなので、治療費用とセットでの加入が必須ですね。

航空機受託手荷物遅延等費用

これは、預けた手荷物が行方不明になったり、到着遅れた場合の費用を補償するもの。渡航先で手荷物が届かないと、洗面用具や着替えなど困りますよね。この保険では購入費用を保証してくれます。
そんな費用は正直たかが知れた額ですが、保険金額も100円しない程度です。
JALやANAではそもそも荷物がなくならないし、しっかりとフォローしてくれるので必要ありません。
LCCとか海外の航空会社を利用する場合は着けておいたほうが安心ですよね。
そうはいっても、保証される金額は10万円程度ですので、そんなに重要な保険ではありません。なくてもお財布が痛いだけ。生死には全くかかわりません。

航空機遅延費用

搭乗する飛行機の出発が遅延した場合は、乗り継ぎができなかった場合に、食事代や宿泊費等を賄ってくれる保険です。
搭乗機が遅延する場合、機材故障等、航空会社の責によるものであれば、ミールクーポンが配布されたり、宿泊施設を手配してくれますが、自然災害やテロが原因だと航空会社は保証してくれません。
そういった場合の諸費用を賄ってくれる保険です。こちらも無くても全く問題ないです。

ホントに必要な保険は「治療」と「救援者費用」「賠償責任」だけ!

さて、いろいろな保険がありますが、この中で本当に必要な保険は疾病・傷害治療保険と、救援者費用保険だけです。
この治療保険と救援者保険の2つがしっかりと保証されていないと、事故や病気にあった際に助かる命が助かりません。他はせいぜい10万円程度、財布が痛むだけです。

というのも死亡保険は、死んだ後の家族の生活保障ですが、多くの場合生命保険でそれは保証されます。また、携行品損害や受託手荷物遅延費用は、お財布には痛いけど、それだけの話です。
しかし、治療費用が保険で補償されなければ、海外では治療をしてもらえない可能性もあります。また、救援者費用がなければ、日本や治療可能な第三国へ移送ができない可能性があります。海外で治療を受け続けると更に多額の治療費がかかります。
なにか事故や病気にあった際に、保険がないという理由で、治療してもらえない最悪のケースもありうるのです。
また、もし自己負担で賄ったとしても、後日数百万円の多額の請求が来る可能性だってあるのです。

そして大切なことは、治療費用に関しては必要性が高いにもかかわらず、クレジットカードの保険では全く不十分なことが多いのです。
なお、賠償費用に関しても、場合によっては莫大な賠償負担が生じる可能性があります。子供のいたずらでとんでもないことになったり、サイクリングなどスポーツ中にけがをさせる場合などです。ただし、賠償費用はクレジットカードの保険でも十分賄えるケースが多いです。

いざという時のクレジットカードの保険の実際

海外旅行保険で多くの人が頼りにするのはクレジットカードの保険です。
ここでいうクレジットカードはゴールド以上です。基本的に年会費が無料~1000円程度の一般カードでは補償は期待できません。
年会費が1万円近いゴールドカードは保険が手厚いことを売りにしています。
ゴールドカードの保険金額は最大5000万円などインパクトのある金額です。でもこれはめったに使うことのない死亡保障での話。
実際に盲腸になった時などに使う、治療費用だけを見ると、決して頼りにできる金額ではありません。

ANA VISA ワイドゴールドカードを例に見る

「最大5000万円」「ANA」「VISA」「ワイド」「ゴールド」といかにも保険が充実していそうな「ANA VISA ワイドゴールドカード」を例に保険の充実具合を見てみましょう。

ANA VISA ワイドゴールドカードの保険の内容です。
参考までに損保ジャパンの海外旅行保険OFFの最安プラン(掛け金約3000円)と比較します。

種別 ANAゴールド 損保ジャパン
傷害死亡・後遺障害 5000万円 500万円
疾病死亡 0 500万円
傷害治療 150万円 1000万円
疾病治療 150万円 1000万円
賠償責任 3000万円 1億円
携行品損害 50万円 30万円
救援者費用 100万円 1000万円
航空地遅延費用 0 2万円
手荷物遅延等 0 10万円

です。
クレジットカードの保険は死亡保障や携行品損害に対する補償は、個別の海外旅行保険を上回るレベルで充実しています。一方で、治療費用や賠償責任、救援者費用の金額が海外旅行保険に比べると相当に補償金額が低いです。

クレジットカード保険だけだと「ここ」が危ない!

クレジットカードの保険でも、契約した病院に行けば、自己負担や立替払いなしで治療を受けられるキャッシュレスサービスが増えています。
ANA VISAワイドゴールドカードに関しても、三井住友海上保険のキャッシュレスサービスが利用できます。
風邪程度であれば、キャッシュレスサービスを利用して病院に行って治療を受けて、自己負担なし「はいさようなら」と日本と変わらない治療ができます。

しかし注意点が2つ。
それは、「キャッシュレスサービスの利用は、治療が保険金額に収まる場合」です。

例えばホノルルで「盲腸」の手術が必要となった場合、治療費は300万円。上の表で比較対象とした損保ジャパンの海外旅行保険OFではの最安プランでは、疾病治療は1000万円までの補償となり、キャッシュレスサービスが利用できます。
しかしANA VISAワイドゴールドカードの補償上限は150万円です。この場合は、キャッシュレスサービスを原則利用できないとされています。それどころか、300万円分の支払い能力を提示しなければ治療を拒否される可能性もあるのです。

もう一つは救援者費用の範囲に「日本までの移送費用が含まれない保険もある」ということです。

ハワイ・カカアコ暴行事件で生じた実際は

冒頭でお話ししたハワイ・カカアコの公園ではご夫婦2人が暴行を受けました。残念ながら海外旅行保険には入っていなかったとのことです。このため、現地では応急治療しかできず、事件の翌日に自己負担の飛行機で帰国。
成田の病院に緊急入院して現在、日本で治療にあたっているとのことです。
ハワイでの応急処置に関して、ホノルルの病院からご主人が440万円、奥様が300万円の計734万円近い請求を病院から受けているとのことです。

クレジットカードの保険には加入していたようですが、病院からの請求をもとに今後請求手続きをとるとのこと。クレカの種別や所持枚数にもよりますが、全額の補償は厳しそうです。
また、健康保険組合に海外療養費の請求を行えますが、それは治療が終わる段階になるとのこと。しかも前述したとおり、日本での治療代の7割ですので、金額もそれほど期待できません。

これが、もしも、最低限でも海外旅行保険に入っていれば、夫婦それぞれが1000万円の補償になりました。
この金額内であればキャッシュレスサービスを利用して、保険会社が間に入って病院と支払に関してはやり取りしてくれるため、病院では安心して治療に専念できるはずでした。
さらに、救援者費用として、治療中患者の日本への輸送費も補償されます。ハワイでの応急処置終了後、病態が安定したら、日本の病院まで、医療ケアが十分に整った万全の状態で移送することもできたはずです。
なお、一度日本に移送されれば、高額療養費制度が利用でき、自己負担額が一定額に抑えられますので、海外での治療ほど負担は大きくありません。
これが海外旅行保険に入っていなかったため、すべて自分で治療の手配をしなくてはならなかったようです。

複数のクレジットカードは補償が合算されるけど

クレジットカードが複数ある場合、原則として補償は合算されます。疾病治療150万円のカードが2枚あれば300万円が上限となります。
この金額ならば盲腸の手術でも対応できるはずですよね。

それでは今回のカカアコ事件において、被害者の方が複数のクレジットカードを所持していた場合はどうなるでしょう?
治療保険が150万円のカードを5枚所持していれば、理論上は750万円まで補償されるはずです。
実際にこれまで「カードを複数所持して合計が1000万円なので海外旅行保険はかけなくても大丈夫」という意見もあります。
しかし。複数のクレジットカードの保険ではキャッシュレスサービスが利用できない可能性が大きいです。
この場合、病院への支払いや、やり取りなどについてすべて自身が行い、数百万円を支払ったり、支払い能力の証明を行ったうえで、後日、保険会社に請求という形になります。
保険会社間でやり取りなどは行ってくれるのですが、それでも結構大変です。
クレジットカードの保険を合算すれば、必要金額はクリアできても、決して安心せず、別途海外旅行保険に加入することをお勧めします。
また、日本への移送が必要になった場合に利用できる、救援者費用はクレジットカードによっては保証されません。個別の海外旅行保険なら補償される全容がわかるので安心なのですが、複数の保険を使うとなると、相当大変になりそうです。特にケガや病気になったときはなおさらです。

最強=クレジットカードの保険×海外旅行保険

「なんだクレジットカードの保険なんてダメじゃないか」なんてことはもちろんありません。
実はクレジットカードの保険と同レベルの保険に入ろうとすると、保険料が3000円近く必要です。これは、傷害死亡・後遺障害の保険金額が高いこと、携行品損害の補償が手厚いことがその理由です。
逆に、個別の海外旅行保険で保険金額が上がる要因の1つは、死亡保障と携行品損害を増やした場合です。
そこでお勧めなのはクレジットカードの保険で傷害死亡や携行品損害をカバーします。そしてキャッシュレスサービスなどが重要な疾病や傷害治療と、補償範囲が広い救援者費用は個別の海外旅行保険でカバーするということ。
クレジットカードの保険をサブとして利用すると、個別の海外旅行保険は、一番安いものでも十分にカバーできるのです。1000万円の疾病治療の保険に加入していれば、よほどでない限りは支払い能力の関係で病院が拒否することはないでしょう。
万一1000万円を超えた場合には、クレジットカードの保険を追加で利用すれば、自己負担額も低く抑えられます。
これが最もリーズナブルかつ無駄のない補償が受けられますのでおすすめです。

クレジットカードの保険の確認ポイント

しかし、一部のハイグレードなカードではこの限りではありません。
というのも、保険が充実したゴールドカードや、ゴールドカードよりも上のプラチナカードでは、治療費用を1000万円までを保証しているカードもあります。
また、救援者費用についても、日本までの移送も含めているカードもあります。さらに、疾病治療も金額が多ければ、改めて保険契約は必要ないかもしれません。保険契約をよく見てくださいね。

保険契約の確認ポイントです。まずは疾病・傷害治療の金額です。300万円程度まであれば、一応最低限安心かと思われます。クレジットカードの保険の場合、「疾病治療」「傷害治療」が別の金額になっているケースもありますので、ご注意ください。
次にキャッシュレスサービスの有無です。キャッシュレスサービスがあるか。そして肝心なのは、提携病院が渡航場所にあるかどうかです。
最後に救援者費用の内容です。旅行先に日本の親族が訪れるのはもちろんですが、治療中の患者(怪我をしたあなた)の日本への移送費も救援者費用に含まれるかを確認ください。

以上を満たしているクレジットカードならば一安心ですね。SPGアメックスの場合、治療費が200万円とちょっと頼りありませんが、キャッシュレスサービスと救援者費用の範囲は合格点です。

家族特約には期待できない場合も。

クレジットカードのうち、ゴールドカードの一部では家族特約が付いており、同居の家族まで保証が及びます。しかしカードによって家族の範囲には制限があり、ANAVISAワイドゴールドカードの場合は、19歳以下の同居の子供です。配偶者は対象外です。
しかも残念ながら子供への補償は手薄いです。

種別 本会員 家族特約
傷害死亡・後遺障害 5000万円 1000万円
傷害・疾病治療 150万円 50
賠償責任 3000万円 1000万円
携行品損害 50万円 15万円
救援者費用 100万円 50万円

です。賠償責任や携行品損害はともかく、通常、子供のほうが病気になったり、ケガをするリスクが高いと思われます。その割に費用が低めになってしまっています。
海外では50万円の治療費用というのは全く備えにはならない金額です。
お子さん連れで海外に行く場合には絶対に別途海外旅行保険に加入すべきです。
保険が充実した本会員(お父さん)はクレジットカードで補償を受けるとして子供だけ個別の海外旅行保険という考えもアリなのですが、家族でファミリー保険などに加入するのと実はそんなに値段が変わりません。

なお、SPGアメックスでは会員の家族も会員本人と同額の保障を受けられる上、家族会員の範囲も「配偶者と3親等以内の同居の家族」など、ANA VISAワイドゴールドより広めで、全然安心感は高めです。でもやっぱり治療費200万円は心もとないので、別途加入をおすすめしますが。

まとめ

このたびケガをされたご家族には改めてお見舞い申し上げます。
海外旅行保険の重要性に改めて気づかされた事件でした。今回説明したように、海外旅行保険と言っても、掛け捨ての保険と、クレジットカードの保険では保証される内容も異なります。また、カードによっても大きく異なります。
今回はハワイの日本人コミュニティの方々が、ケガをされた方々のご支援をされているようで、海外旅行保険に加入していなかったにもかかわらず、病院での治療や各手続き等進んでいるようです。

こちらのページでは、被害にあわれた方への募金活動を行っているようです。本記事をお読みいただき、海外旅行保険の重要性に改めて気づいたという方がいらっしゃったら募金へのご協力もご検討いただければと思います。

せっかくの楽しい旅行が台無しにならないようにぜひ保険には加入してください。
家族みんなで加入してもせいぜい5000円程度ですので。

なお、記事内容を鑑み、本ページにはいかなるアフィリエイトリンクや広告も掲載していません。

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