2023年、オール電化住宅にとって冬の時代がやってきました。10年前に建築した我が家は、オール電化住宅。もともとの想定では、オール電化住宅は、安い深夜電力を利用したエコキュートなどでお湯を沸かして、FITで固定された値段で、昼間に発電した電力を売電するという仕組みです。
ところが、FIT(固定価格買取制度)の10年間の期間が終了すると、40円近くだった買取価格が、8.5円に激減。それどころか、深夜電力料金が10円未満からついに30円近くまで大高騰。そんなオール電化住宅に最適なプランが、実は超マイナーな「再エネおあずかりプラン」を始めとする仮想蓄電池プラン。早速我が家も導入したところ、いつでも電気を使えるノーストレスな生活を送りながらも、売電価格もアップするなどまさにいいことづく目。
電力危機時に選ぶべきプランをじっくり解説します。
オール電化住宅の危機
東京電力では、でんこちゃんがCMをしていたオール電化住宅。火を扱わない安全性に加えて、安い深夜電力をつかうことで、光熱費が削減できることで、急激に利用が増えました。
さらにオール電化住宅と相性が良い太陽光発電システムにより、夜間はエコキュートで発電し、昼間は高値で売電することで、ガスの基本料もかからず、我が家も安い光熱を謳歌していました。
わずか2年前の1月です。電気代がほとんど太陽光発電でペイできていました。
それがわずか2年でこちらです。電気代が爆上がりしたのに、買い取り価格が下がり、持ち出しが激増です。
消費電力 | 電気代 | 発電電力 | 売電料金 | 実質支払額 | |
2021年1月 | 693kwh | 12551円 | 246kwh | 10332円 | 2219円 |
2022年12月 | 405kwh | 16201円 | 195kWh | 1657円 | 14544円 |
電気料金単価は18円から40円と2倍以上に。そして売電単価は42円から8.5円と1/4以下に激減しました。
そのため、実質支払額も7倍以上に。我が家は共働きで平日は昼間は学校に行っているため、電気使用量は比較的少ない方。それでもこの上がり具合に危機感を強くしました。
原因は明確です。太陽光発電は、10年間は設置当時に保証された金額で買取がされます(我が家は42円でした)。しかし10年経過後には、東京電力の場合は8.5円。それ以外の電力会社でも9円とか9.5円と、激減してしまいます。そしてウクライナ進行に端を発する燃料費の高騰、急激な円安の進行などなど、電気代は高騰を続けており、収まるところを知りません。
暦年の推移を見ると明らかです。
上がりまくっている深夜電力料金
さて、ここでオール電化住民の多くが契約している「電化上手」プランの料金推移を見てみましょう。
震災前は、とにかく深夜電力を安くしていました。昼間に比べて1/4程度で利用できるメリットを訴求してオール電化の契約は増えていきました。しかし震災で原発が停止しました。そこで深夜電力料金をはじめ、料金が全般的に値上がりしましたが、この頃はまだ原発が稼働する楽観論もあり、深夜電力は他と比較して安いままでした。しかし2022年10月の改定では、本格的に状況が変わってきました。
深夜電力に誘導するのではなく、むしろ昼間料金を下げて、深夜電力のお得度合いを下げていったのです深夜電力はピーク時の1/4程度の料金から、1/2程度の料金に近づきました。この理由は、太陽光発電の普及です。以前までは、原発の深夜運転分が余剰として、安価な電力でしたが、いまでは、太陽光発電により、昼間の電力が余剰になっています。そのため、昼間電力を安くする方向となりました。また、深夜電力は今は火力発電所の運転によって、賄われています。燃料代は、昼間だろうと夜間だろうと変わりません。そのため、燃料調節費を含むと、3/5程度の料金になったのです。そして、2023年6月に予定されている料金改定では、さらに値段が上がることに。
10年前と比べると昼間料金は、1.5倍の値上がりですが、深夜電力は3倍以上の値上がりに。もはや深夜電力は安い電力とは言えない状況になっているのです。
2012年(震災前) | 震災後 | 2022年10月 | (※燃調含む) | 2023年6月 | |
夏季昼間 | 33.92/kWh | 38.63円/kWh | 34.16/kWh | 47.15/kWh | 49.12/kWh |
その他季昼間 | 28.83/kWh | 31.64円/kWh | 30.67/kWh | 43.66/kWh | 45.63/kWh |
朝・夜間 | 23.68/kWh | 25.92円/kWh | 25.94/kWh | 38.93/kWh | 40.90/kWh |
深夜 | 9.72/kWh | 12.16円/kWh | 15.12/kWh | 28.11/kWh | 31.80/kWh |
FIT切れオール電化住民がすべき対策は
さて、オール電化民が取るべき選択を考えましょう。
まずは、電気の使い方の大幅見直しです。従来は40円近くで売電できていました。そのため、40円で売れる電気を使ってしまうのはもったいないので、なるべく発電した電気を使わない生活がお得でした。
代表的なのはエコキュートです。
太陽光が発電しているときに2kwで、2時間運転すると40円/kWh×2kw×2h=160円分の電気が消費されます。
震災前の深夜電力が9.72円/kWhのときに2kwで、2時間運転すると9.72円/kWh×2kw×2h=38.8円です。昼間発電する160円分の電気はすべて売電することができます。
深夜に発電して、昼間売電すると、差し引きで120円以上得することとなっていました。
ところがFITが終わり、売電単価が8.5円となり、深夜電力が28.11円になっています。
太陽光を利用すると、8.5円/kWh×2kw×2h=34円分です。
ところが、深夜電力で同条件で運転すると、112.44円の電気代です。ただし、34円分昼間売電できますが、34円-112.44円で差し引きで90円分かかってしまいます。だったら発電分を売電せずに利用したほうが圧倒的にお得です。
そう、従来は、発電した電気を以下に使わずに、夜間に電気を使うように頑張っていた生活だったのに、FIT後は、以下に発電した電気を効率良く使うかが家計節約のために重要になるのです。
これまで、エコキュートや、食洗機、洗濯乾燥機など、深夜にタイマー運転していたものを、今度はすべて、昼間太陽光で発電しているときに利用するように、180度頭を転換する必要があるのです。
エコキュートを昼間運転させる方法は?
さて、洗濯機や食洗機は、稼働時間も短く、自分自身で稼働を設定できるので、昼間運転させるのは容易です。問題はエコキュートです。エコキュートは一般的には、「原則的には夜間中心に運転するけど、お湯が少なくなったら昼間運転する」といったプログラミングがほとんどです。
最近の機種では、「おひさまエコキュート」など、太陽光の発電電力を優先して湯沸かしをする機種もありますが、ごく少数。基本的には、せいぜい「電化上手」「お得なナイト10」など、いくつかの深夜時間帯の設定時間を変更するくらいしかできません。
そんな私が行ったのが、エコキュートの時刻設定を12時間ずらすこと。
この方法であれば、エコキュートは深夜11時のつもりで湯沸かしするが、実際に運転するのは太陽光発電真っ盛りのお昼の11時です。昼間の発電電力を有効に活用できるのです。
一般的に深夜時間帯の湯沸かしとして23時から7時のあいだに湯沸かしするケースが多いです。12時間ずらすと11時から夜19時に湯沸かしするため、後半の3時間は太陽光が利用できません。
9時間ずらして、8時から16時に湯沸かしするように調整すると、太陽光を更に有効活用できます。ただこの場合、給湯器の時計表示がずれすぎて、家族から苦情が来たため、やめました。12時間ずらしだと、感覚的な時間表示はわかりやすいため、苦情が来ませんよ。これならどのエコキュートにもできるのでおすすめです。
実は環境にも良いエコキュートの昼間運転(12時間ずらし)
さて、このエコキュートの昼間運転ですが、実は環境にもとても良いことです。
というのも、エコキュートは空気を利用してお湯を温めるもの。そのため、外気温が高ければ高いほど効率的にお湯が作れるのです。
東京電力の関連会社の検証でも、最大で30%程度、消費電力がすくなくなっています。
この理由は外気温との温度差に加えて、多くの場合でお湯を利用するのは夕方から夜にかけてからという理由もあります。エコキュートは魔法瓶のようにしっかりと保温できる仕組みですが、それでも前日の深夜から翌夜まででは、どうしてもお湯が冷めてしまいます。その点昼間運転であれば、昼から夕方にかけてお湯を作るため、お湯の冷める割合が低くてすみます。
昼間のほうが水道の温度も高いかもと思いましたが、気温にやや遅れて連動することと、気温ほど温度の変化が内容で優位な差が取れるデータはありませんでした。
ただ、単純な電気消費量を減らすには、エコキュートの昼間運転はとても有効な手段なのです。
最大の敵は相変わらず高い昼間電気
さて、太陽光発電の利用にあたって一番の問題は太陽光は発電が安定しないことです。
エコキュートを沸かすのに、太陽光発電のみを利用するのはたとえ12時間ずらしても困難です。天気が良くない日もあれば、曇る時間もある。12時間ずらしの最大の敵は、昼間の天気が予測できないこと。発電されている日だったらいいのですが、そうでなかった場合の影響が大きいです。
具体的には、夏季昼間に、太陽光を使えば、8.5円/kWhですが、昼間だと、49.12円kWhです。夜間だったら31.8円/kWhなので1.5倍近いです。ただ夜間のほうが効率が良いことを考えると、昼間設定のほうがお得になるケースが多いと思います。ただギリギリまでお得を追求したいときには一つ手段があります。それが蓄電池の導入です。
売電価格 | 8.5円/kWh |
夏季昼間 | 49.12円/kWh |
その他季昼間 | 45.63円/kWh |
朝・夕方・夜 | 40.90円/kWh |
深夜 | 31.80円/kWh |
蓄電池はお得だけど絶対にもとをとれない設置価格
さて、電気を一番オトクに使う方法が蓄電池の導入です。発電した電力を売電せずに蓄電。そして昼間の高い料金時間帯に使うことです。それが最もお得な自家消費です。ただ蓄電池の導入は100万円以上の導入費がかかります。我が家は毎月200kwhから300kwhを発電しています。
すべて標準プランで売電すると1,700円~2,550円です。これをすべて昼間の消費に使うと、夏季は9824円~14,736円、その他季では、9126円~13,689円の電気を購入する必要がなくなります。
その差額は、250kwの発電だとすると、最大で1年間で14万円(毎月11,698円)です。ただ全て昼間消費した場合など、条件はやや限定的です。
だいたい蓄電池は150万円~200万円くらいと言われています。また、稼働年数は15年ほどとのこと。MAXお得な14万円でトラブルなく毎年稼働して15年でやっと210万円で、設置費用がペイできるかどうか。
災害時の電力確保とか、そういった観点では検討の余地ありですが、正直お得目的で蓄電池を選ぶメリットは殆どありません。
仮想蓄電池プラン(再エネおあずかりプラン)とは?
しかし、一つ検討すべき蓄電池プランがあります。それは「仮想蓄電池プラン」と呼ばれるプランです。
東京電力では、「再エネおあずかりプラン」、関西電力では「貯めトクサービス」などと呼ばれていますが、基本的なサービスは一緒。
一定の手数料を支払うことにより、一定量の発電した電気を蓄電池に貯めたと仮想して、値段の高い時間帯の電力量と相殺してくれるというサービスです。
東京電力の場合は、月4000円の支払いで、250Kwhまでを買い取りしてくれます。
東京電力では上記のように紹介しています。
2019年にサービスが開始されていましたが、ほとんど普及していません。その理由としては、4000円の手数料がかかる割に、昼間でもFIT価格よりも低い値段でしか買い取りがされなかったからです。
しかしこの電力危機の時代に仮想蓄電池は俄然注目を集めるようになったのです。
仮想蓄電池は燃料調節費の高騰によりFIT超えの売電単価!
仮想蓄電池が注目を浴びる理由が、「仮想蓄電池による買取価格=燃料調節費を含んだ金額」だからです。夏季の昼間に充当すると買取価格はなんと49.12円と、FITが創設されたときの48円を超える買い取り価格になるのです。(厳密には充当されるので料金が相殺される)
250Kwhのすべてを売電すると、2,125円ですが、夏季昼間に充当すると、12,275円分です。差し引き1万円強高額に買い取りされます。4000円の手数料を差し引いても6,000円はお得です。
また、仮にすべて夜間電力に売電されても、7,950円です。差し引きで5,800円となり、4000円の手数料を差し引いても、通常の買取プランよりも1,800円お得です。いまの料金水準であれば、損するような状況は考えにくいまさに最強プランなのです。
ホントのところを大公開
さて、それでは我が家の電力事情を丸裸に公開しましょう。
12月の再エネおあずかりプランにおける電気料金請求額は、21,019円となりました!
Webページで試算すると、再エネおあずかりプランの方がお得になるとのこと。今の価格水準だとほとんどのケースでお得になるのです。
仮想蓄電池プランの3つの罠とは?
さて、誰にでも100%進められるかというと残念ながら層でもないのです。
残念ながら、再エネおあずかりプランでは、燃調費は買取価格に含まれますが、発電付加金については、含まれません。3.5円とかそれなりの値段ですが、こちらは税金のようなものなので、致し方ないですよね。
また、さらに注意点です!今後開始される政府の電力負担軽減策において、燃料調節費が補助されて削減されます。相対的に買い取り価格も下がるので、そういった点にも注意が必要です。
最大の注意点がこちら。お得なナイト10や、電化上手のプランは現在新規加入ができないプランとなっています。そのため、一度再エネおあずかりプランに移行すると、再度電化上手には加入できなくなってしまいます。
ただし、「再エネおあずかりプランから、電化上手への変更は可能か」を確認したところ、東京電力より下記回答をいただきました。(抜粋)
標準プランへの変更で、「電気」と「太陽光」のご契約に戻すことが可能です。 なお、通常の「季節別時間帯別電灯(選択約款)」(電化上手)の新規受付申込は、2016年3月31日をもって終了させていただいており、標準プランへの変更で、お客さまご負担軽減を目的として、以前ご契約されていた電化上手と同等の料金プランである 「再エネおあずかりプラン[季節別時間帯別電灯]」をご契約させていただいております。 (おあずかりサービス料金4000円はいただきません)
以上の通り電化上手への変更はできないものの、電化上手と同じプランでおあずかりサービス料金がかからないプランで利用できるので、実質的には同じプランを使えると言えるでしょう。
結局お得なのかそうでないのか
以上のような結果、どちらのプランが良いかは、正直難しいところです。乱暴に言えば、
・発電量が多い人ならもとは取れる
・今後も電気代が高騰している状況が続けばもとは取れる。
・昼間の利用が多い人のほうがよりもとは取れる
ということです。
逆に、発電量が少なかったり(100kwh未満)、今後電気代が下がったりすれば、もとは取れないでしょう。
ただ、私は加入してとても満足しています。その理由は、「仮想蓄電池があることで、時間を気にせずに電気を使えるようになったこと」でストレスが大きく減ったからです。
仮想蓄電池であれば、高い時間帯に電気を使っても、それを充当できるので、「今は高い時間だから電気を使うのをやめよう」といったストレスから開放されます。オール電化の人ならではの悩みをお持ちの方はぜひご検討ください。
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