JALでは、既定の条件をクリアすると、JGCという上級会員資格が永続的に付与されます。
JGCのような航空会社の上級会員になると、専用の搭乗手続きや、飛行機の待合時間にはラウンジが利用でき、搭乗時には優先搭乗ができるなど、飛行機に乗る際には快適そのもの。
一方で、にわかに、「上級会員が多すぎる弊害」も発生していることは事実です。さらに、修行と呼ばれる上級会員になるための手段が、値上げやチケットの争奪戦でコストも上がりかなり厳しい状況に。
ずばり、2020年にJALの上級会員資格を得るための「JGC修行」をすべきかどうか!
2017年にJGCをした私が、「もしステイタスを持っていなかったら、今年だったらチャレンジするか?」という視点でまじめに検討してみます!
JGC会員とは?
JALでは、年間に特定の回数搭乗したり、既定のフライトポイントを得たりすると、サファイヤステイタスなどと呼ばれるステイタスが付与されます。
このステイタスがあると、
・専用の搭乗手続きカウンター、保安検査場の利用が可能
・搭乗前にさくらラウンジが本人+1名利用可能。
・飛行機に優先的に搭乗できる。
というサービスを受けることができます。
通常、このステイタスは飛行機のたくさん搭乗した翌1年間(事前期間をあわせて最大約2年)だけしか利用できません。
しかし、このサファイヤステイタスを所持している期間限定で、JGC(JAL Global Club)と呼ばれる上級会員組織に入会することができます。
(正確には、JGC機能をもつクレジットカードの発行)
一度JGCに入会すると、クレジットカードを所持している限りは永続的に上級会員としてのサービスを受けることができます。
このJGC会員になるために必要な、「サファイヤステイタス」を獲得することが、JGC修行と呼ばれます。
サファイヤステイタスを得るためには、飛行機の搭乗すると貯まるポイントであるフライトポイント(FOP)を貯めるか、50回JALグループの飛行機に搭乗する必要があります。必要なフライトポイント(FOP)は50000FOPです。
国内線利用の場合は、修行価値は低下!
JGC会員の国内線利用時のメリットは、専用保安検査場の利用と、搭乗前のラウンジ利用が主でしょう。
いまや、モバイルで搭乗券が発行できる状況なので、専用のカウンターを利用する機会はあまりありませんが、必ず通貨が必要な保安検査において、JGC専用の保安検査場が利用できることは大きなメリットです。特に近年は、飛行機利用客が増加しており、空港の混雑が増す中なので、なおさら大きなメリットです。
もう一つのメリットが保安検査場通過後の制限区域内にある「さくらラウンジ」が利用できることです。
クレジットカードのゴールドカードを所持していると利用できるカードラウンジは、暗い雰囲気で椅子がある待合室。航空会社のラウンジはカードラウンジとは一線を画す雰囲気で、さらにアルコールや簡単なおつまみも提供するのです。そのため、多くの人たちは、この航空会社ラウンジを利用する目的で、JGC修行を行っていたのです。
しかし、近年異なった動きも出ています。空港運営会社によるラウンジのパワーアップです。
羽田空港のカードラウンジが「パワーラウンジ」という名称で、サービスを飛躍的に向上させていることです。
従来のクレジットカードのラウンジは、椅子が並べてあってガストにあるようなドリンクバーマシンがあるだけでした。
しかし、最近登場した「パワーラウンジ」というカードラウンジは飛躍的に利便性やサービスを向上させているのです。
そして、続々と従来のカードラウンジが駆逐されて、パワーラウンジへのリニューアルが進んでいるのです。
このパワーラウンジは、wifiや電源利用が可能な座席が用意されており、飛行機の離発着が見られる眺望など、従来の航空会社ラウンジに決して引けを取らないクオリティです。
唯一残念な点は、アルコールが有料ですが、逆に優れた部分もあります。
というのも、パワーラウンジは、アルコールの提供がない分、「青汁(豆乳入り)」や「アイスコーヒー」「黒酢ジュース」「オレンジジュース」などがディスペンサー入りで提供されています。
アルコール類はさくらラウンジが圧勝なのですが、コーヒーは互角、ソフトドリンク類はパワーラウンジの勝利です。
アルコール類をラウンジで求める人はどれくらいいるでしょうか?おそらくソフトドリンクが充実しているほか、恩恵を受ける人も多いはずです。
そんなわけで、飲食物に関しては、互角というのが個人的な感想です。
それ以外は、制限区域内にあり、飛行機の運行案内も充実しているため、さくらラウンジと遜色ないクオリティです。私自身も搭乗口の場所によっては、航空会社ラウンジではなくパワーラウンジを選択します。
「羽田空港の国内線利用で航空会社のラウンジを利用したい」という動機に対しては、上級会員資格をお金をかけて取得する意味合いは、あまりないのが正直なところです。
ただし地方空港のカードラウンジは未だに待合室の域を出ませんので、差は大きいです。
このように、国内旅行中心で特に預入荷物がない場合、カウンターも利用しないし、パワーラウンジも使えるしで、保安検査場の混雑を除けば、上級会員としてのメリットを十分に受けることは難しいかもしれません。
海外利用ではいまだ大きな価値がある
上級会員資格が活躍するのは海外旅行で利用する場合です。
国際便では、基本的には必ず航空会社のカウンターを利用します。
そのため、ビジネスクラス用のカウンターを利用するメリットは非常に大きいです。
JALや、ANAなどの日本の航空会社を利用する場合はもちろん、スターアライアンス(ANA)やワンワールド(JAL)に加入している会社を利用するときには、同等のサービスが受けられるため、私自身はむしろ海外出張や旅行の時に恩恵を受けることが多くあります。
日本国内では、近年空港での混雑は、激しさを増しています。そのため、国際線でのパスポートや荷物預入荷物でビジネスクラスカウンターを利用できるメリットは非常に大きいです。
また、海外発便の時は、さらにメリットが増大します。
というのも、日本では、ビジネスクラスのカウンターがすいているときは、エコノミークラスの乗客の手続きを受け付けることが多々ありますが、
海外航空会社では、たとえビジネスクラスカウンターのスタッフがあくびをしながら雑談している状況があります。
海外のエコノミークラスの乗客は、手続きが不慣れだったり、非常に大きな荷物を持ち運ぶ人など、様々な人がおり、空港のカウンターでの待ち時間がとても多くなることがあります。
そのため、エコノミークラスのチェックインは大変な混雑する機会を非常に多いです。
また、ラウンジに関しても国内線のカードラウンジはリニューアルがだいぶ進んでいますが、国際線ではやはり航空会社ラウンジの利便性は圧倒的です。
また荷物の預け入れに関しても、優先的に荷物が出てくるプライオリティタグがあれば、混雑する前に街中に移動することができます。
ここ数年の上級会員の状況は?
一方で、近年、「上級会員の人数が増えすぎたことにより、サービスが低下している」という指摘があります。
実際に羽田空港の国際線ターミナルのさくらラウンジでは、テーブル席への着席ができず、カウンター席利用になることもあるなど、近年の混雑度合いは上がっています。
それもそのはず。JALやANAなど日本の航空会社は上級会員資格を一度得ると、クレジットカードを所持するだけで、永年にわたって上級会員資格を維持できる世界でもまれなシステムを採用しているのです。
そのため、上級会員の人数は増え続け、それに伴い混雑が進むのです。
さて、こうしてみたときに上級会員のメリットは享受できるのでしょうか?
また、航空会社としては上級会員の数を抑制するような制度を導入するのでしょうか?
結論から言うと、多少混雑したとはいえ、上級会員のメリットはいまだに健在です。
確かに、カウンターの待ち行列では、ビジネスクラスカウンターでさえ、混雑することが増えています。
ただし、それでもエコノミークラスよりははるかに待ち時間が短くて済むのです。
また保安検査も上級会員が優先的に受けられるレーンは通常よりも待ち時間は短いです。
また、ラウンジに関しては、確かに最近は、混雑により、まとまった席を確保できないケースが増えてきました。しかしそもそも空港のラウンジは回転率がとても高いので、少し別の場所で過ごせばあっという間に空席は確保できます。そのため、ラウンジの混雑と言っても、影響を受ける場面は少ないと考えています。
近年は、インバウンド・アウトバウンドともに需要が高く、空港全体が混雑している感じることが多いです。混雑しているとはいえ、ラウンジを利用しないで外部の飲食店を利用するほうが混雑によるストレスは大きいです。
ただし、以前は、無償でプレミアムエコノミークラスにアップグレードされていたANAのサービスがなくなったりと、若干上級会員向けのサービスは低下している印象はありますね。
航空会社は上級会員を抑制したいのか?
肝心の航空会社は上級会員の数を抑制したいのでしょうか?最近、上級会員のサービスをPRするテレビ番組がよく放映されています。(風間君とか高橋真麻さんとか)
これらのテレビ番組はもちろんANAやJALなどが全面協力しています。
こうした例を見ても、JALやANAは上級会員を抑制するどころか、増やそうさえしていると考えられます。
羽田空港や成田空港では今後発着できる枠数が増え、海外の航空会社やLCCとの競合はますます厳しくなっていきます。そんな中で、自社の便に継続的に搭乗してくれる上級会員を増やそうという戦略は決して間違いではないと考えます。
ここ2~3年、日本各地の空港で急ピッチにラウンジの改装や増設が続いていました。主にはダイヤモンド会員用のラウンジの質をさらに高め、ビジネスクラスラウンジは広くするという改修です。
ビジネスクラスラウンジは、場所さえ確保できればそれほどコストがかかるものではありません。特にJALやANAのように高稼働率であれば、費用対効果は高まっていきます。
さらに言うと、最もありがたい顧客は、飛行機にあまり搭乗しない上級会員です。修行と称して自社の便に乗ってくれたうえで、上級会員到達後には、めったに飛行機に乗らないお客さんは実は航空会社にとってもかなりの上顧客なんですよね。
そんなわけで、ラウンジ内が混雑しても、カウンターの待ち時間が増えても、航空会社にはそれほどの影響を与えないことから、JALやANAは引き続き上級会員の獲得を進めていく戦略を続けて行くと思われます。
2020年のJGC修行の変更点は?
2020年のJGC修行では2019年と比較していくつか制度変更があります。
まず、すでにステイタスを所持している人を対象に、例年、特定の1月をFOP2倍にするというキャンペーンを実施していました。それが2020年はFOPが1.5倍と、キャンペーンの規模がやや縮小されました。
もう一つは、国際線乗り継ぎの国内線区間について、従来はFOPが100%加算されていましたが、今後は料金区分に応じて加算率が異なるように変更されます。
どちらも、FOPが貯まりにくくなる変更ですね。
羽田-那覇のファーストクラス修業はコストが大幅にアップ!
JGC修行は、以前から飛行機マニア達は行っていました。しかし、ツイッターやブログが活発になった2017年頃からは、ごく一般の人にまで、JGC&SFC修行が大ブームとなりました。
この時期は、JALの羽田-那覇のファーストクラスが非常に安い2万円を切る値段で販売されており、それでいながらマイルやフライトポイントがよくたまるという状況でした。
具体的には、JGC修行で、50000フライトポイント(FOP)に到達する必要があります。ファーストクラスに搭乗すると片道で、2860FOPがたまるので、18搭乗(9往復)で到達できます。
2017年頃は、50万円ほどで50000FOPに到達することができました。FOP/PP単価10円と言われていた時代です。
シャンパンを飲みながらファーストクラスで移動することが、最小単価で修行ができるということで、多くの人がチャレンジしたのです。
しかし、当時と比較すると、羽田-那覇のファーストクラスの状況は変わりました。
・株主優待券の座席数が大幅に減っている(特便と同枠)。
・特便の予約がほぼ不可能なまで取りずらい。
・特便の値段が2倍近くに上昇
・予約開始が2か月前から330日前に変更
こうした理由により、2020年現在は、修行の費用対効果は以前よりも厳しくなっています。
上級会員の修行によく利用される羽田-那覇のファーストクラスは軒並み値上げされています。2~3年前であれば、2万円を切る値段で搭乗できたのがいまでは、4万円で搭乗できればラッキー、下手すると5万円近い値段です。
こうした値上げもあり、今ではファーストクラスの利用では50万円に抑えることは困難です。80万円~100万円くらいの費用が掛かります。
また、ファーストクラスの人気が高まり、修行に利用する安価な運賃はもちろん、普通運賃であってもファーストクラスの予約は極めて困難な状況になりました。
2020年現在、修行の費用対効果は????
ただし、現在も、普通席やクラスJであれば、激安チケットで50万円(FOP/PP単価10円)を目指すことは可能です。
そのため、現状では、普通席かクラスJを利用しての修行が主流となっているようです。ただし、以前だと、ファーストクラスに搭乗の修行に50万円かかってもアルコールを楽しむなど旅情を楽しむことで、その価値は十分にありました。
しかし、ファーストクラスの修行コストが上がった今、普通席で往復するだけでは、正直あまり楽しみはありません。
50万円かけてJGC会員をとる価値があるのかどうかは、改めて検討する必要があると思います。
今でも修行する価値がある人は、
・子供がいる(2人以内)など、空港での待ち時間を極力減らしたい
・頻繁に海外に行く。
・あなた自身が若くて今後も継続的に海外に行く。
・JALのマイルが貯まる
というケースでしょう。
逆に
・国内線がメイン
・一人旅or夫婦やカップル旅が多い。
・子供が3人以上いる。
・ご自身がリタイヤ世代
という場合は、あえて修行をしてまでJGC資格を得る必要性は薄いでしょう。
JGC会員は、維持費が1万円以上かかります。40歳で会員資格を得て30年間活用するとしても、初期費用50万円+維持費50万円ほどかかる計算。
30年間で均すと毎年3万円です。それだけのメリットが得られるかがポイントです。
さらに、上級会員としてのサービスを受けるには、JALをはじめとするワンワールドグループの便に搭乗するときだけです。
その他のグループやLCCに搭乗したときは対象外です。
ラウンジや優先カウンターを利用するために、コストの高い航空券を購入することは、本末転倒です。
そう考えると、マイルが貯まったり海外出張に行くなど、自費以外でJALのチケットをとれる人以外は、LCCに搭乗して空港内のレストランで食事するほうがコスト的なメリットが大きくなるんですよね。
正直、修行してまで上級会員になるメリットを得られる人は限られるというのが現状です。
それでもあえてJGC修行をする人とは!
損得では、元を取るのが難しいJGC修行ですが、それでもJGC修行する人がいるのは事実です。
専用搭乗手続きカウンターや、優先保安検査場はプライスレスな価値があります。空港での待ち時間を短縮できることは、代え難いメリットです。
特に子連れの場合などは、そのメリットは非常に大きいです。
ラウンジも同様。制限区域外にレストランはあるものの、搭乗口至近で、ゆっくりとくつろげるスペースはまずありません。
これらのサービスは通常プレミアムエコノミーやビジネスクラス搭乗者のみに提供されます。プレミアムエコノミーやビジネスクラスのチケットは、数万円プラスするくらいではまず購入できません。そう考えると、年に1度以上海外旅行をするならば、十分にメリットがあるという考え方も可能です。
また、JGC修行は効率だけを求めると羽田-那覇の往復が優れていますが、多少のコスト増を許容できるのならば、福岡や札幌など、全国を旅しながらFOPをためるということも可能です。
また、ファーストクラスは値段が高くなったとはいえ、往路だけや復路だけで利用すると、旅がぐんと楽しくなります。修行自体が楽しめる人ならば、コスト度外視でも一生忘れられない経験になりますよ。
まとめ
もともと飛行機に多数搭乗する人向けに設けられたJGC制度。最近ではテレビでラウンジの様子や上級会員修行が放映されたり、すっかりJGC修行が一般的になりました。
一方で、従来からの上級会員向けサービスは順次廃止や縮小が続いています。
しかし、そんな状況だからこそ、フルサービスキャリアとしてのサービスをしっかり提供するためには、今後、ラウンジなど上級会員向けサービスはますます向上していくと思われます。
また、今年に入って、国際線国内線区間の積算率が低下したり、上級会員になる条件が年々厳しくなっていくのも事実。もし関心があるなら今年のうちにとることをお勧めしますよ。
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